ただいま楽農生活実践中! どんどん深まる「農」との係わり
「年を追うごとに楽しくなってきた。60歳からの元気な楽農生活」



河 野 正 和 さん 


居 住 地:兵庫県神戸市灘区在住
フィルード:兵庫県各地

 「以前高松の植木市でリンゴの苗木を買ったんですが、昨年初めて大きなリンゴが収穫できたんですよ。鉢のまま育てたのにしっかりと実がなって、それが本当においしかった。うれしかったですね」ほころぶほどの笑顔で語ってくれた、元気いっぱいの河野さん。 

 白い髪に白いひげ、それから銀縁の眼鏡。眼鏡の奥に、きらきらと眼が輝く河野さんの顔。奥さんの瑠美子さんと連れ立って、日頃からひいきにしている「愛農人」(神戸市東灘区、JR摂津本山駅南)に「ただいま楽農生活実践中!」のインタビューを受けに来てくださった。



河野さんのほころぶ笑顔

「愛農人」の内部、マーケット部門
お店
 のモットーは「存在の基本は自然、そして人間圏の基盤は農業」
として「日本人の食文化を取り戻すお手伝い」だそうである

 この日は午後から、ラジオ関西の日曜日早朝番組「60歳からのげんきKOBE」の制作・運営会議があるので、「愛農人」でお昼ごはんを食べながら話そうということになった。
  このラジオ番組は、阪神・淡路大震災後、河野さんが中高年のコミュニティビジネス起業支援の「シニアしごと創造塾」(兵庫県主催)を通じて参加した「げんきKOBE」というグループが地域の理解ある企業のスポンサー支援を獲得しながらもう6年も続けてきたそうである。


 さて、いよいよ本題「楽農生活」のインタビュー。

 60歳の退職まであと2年の頃、阪神・淡路大震災が神戸を襲った。1年先送りの退職金前借りで壊れた自宅を建て直す。
 
地面が激しく揺れ、まさに家が崩れたとき、庭にあった一本のどんぐりの木が家の倒壊を抑えてくれた、死ななくてすんだ。近所の方々のおかげで瓦礫から救い出されたときにはその運に感謝したが、後で気がついたことは、自分たちを助けてくれたのは、家が倒れかかっても耐えてくれたどんぐりの木であって、そこにある自然の大きな力だったということ。漠然とした自然への畏敬のなか、新しく建てる家に約25平米の屋上を確保して、自分で植物を育て、花や野菜でいっぱいにしたいと思った。

 あれから10年余り。今では自分のなかに、自然を少しでも守りたい、昆虫もどんどん少なくなってきた、自分たちの子供たちにもっと土のある大地と自然の恵みを残したい、という自然保護の気持ちと、土を残すために自分ができることは少しでも田畑を耕し守ること、という農への気持ちがあふれていて、さまざまな楽農活動、社会活動に精を出す。



 「農」に近づいたきっかけは6年前に奥さんと二人でふるさと村の会員になり神崎郡市川町でボランティアをしたことから。2年近く小豆の選別を手伝い、また リンゴ園のオーナーになった。

  それから、棚田交流人としても養父町や一宮町で、除草、稲刈り、田植えなどの農作業を手伝った。また、三田市のつくしの里の近くで棚田オーナーになり、田植えや稲刈りに参加して、息子や孫を連れ立って楽しんだこともあった。

 しかし「農」がずっと身近になったのは、こうしたボランティア活動の“お手伝い”という立場に飽き足らず、野菜や花の栽培を本格的に学びたいという気持ちの膨らみに思わず入学した兵庫県「阪神シニアカレッジ」の園芸学科(週2回の4年制高齢者大学講座)からである。


阪神シニアカレッジでのダイコンの初収穫


 今から1年前、平成18年3月の日付けが入ったシニアカレッジの卒業記念文集に4年間の学業を修めた河野さんの文章が掲載されている。

  その文章は、「いろいろな疑問に応えてもらい、納得し、そうだったのか!と脳に新鮮な刺激をたくさんもらって、これら有意義な時間が私の日常を変えました。ありがとうございました」と、まず感謝の気持ちで始まる。

 そこから、4年の在学のなかで、「農」を楽しむ気持ちや知識・技術が育まれた一方、限りあるエネルギー資源を浪費して作られる季節はずれの野菜、安価な輸入農産物に押されて変わっていく日本の農業やバランスを失いつつある自然環境、都市部と農村部の情報ギャップなど、日本文化を培ってきた農業への危機感が蓄積していったことが綴られる。

 最後に、これからの目標は、もっとお米を食べて田んぼを守り、食糧自給率に寄与しながら、元気・健康の源である「農産物」の自給と、環境保全型・持続可能な「有機」を核に「農的」な生活をするという挑戦の決意が述べられる。

 「いきがい」として楽農生活を選んだ経緯はドラマチックであり、そこに活動派としての河野さんの性格が象徴的に現れている。

 

  河野さんが元気に楽農生活を楽しめる大きな理由は奥さんの瑠美子さんにもある。

  彼女も河野さんと共にふるさと村や棚田交流人の活動を楽しむかたわら、神戸市のシルバーカレッジの生活環境科(3年制、週2回)に入学して、食・自然・都市の環境のことを学び、コープこうべの運営委員として添加物の勉強などをしてきた。今でも「これからの日本の農業と食料のあり方」を説く神戸大学名誉教授の保田茂先生を中心に神戸市シルバーカレッジの卒業生と共にシルバー大学院の活動を始め、農産物の安心ブランドの研究をするなど、年齢に関係なく「学び続けること」の喜びや楽しみがわかる人なのである。


忘れかけた日本の食文化を取り戻す愛農人のお昼ごはん
(玄米、レンコンの天ぷら、菜の花のおしたし、おつけもの、野菜のスープ等々好みによって選べる)



 河野さんご夫妻は、今いよいよ本格的に田舎暮らしを始めようとされている。
  丹波篠山の古民家物件を探し当て、改修中だそうである。生活の半分ぐらいを向こうに移して、まずは近所の農家のお手伝いぐらいから始めたいと、また眼鏡の奥で眼を輝かせながら、笑顔をこぼされた。


お昼ごはんを楽しむ河野さんと奥さんの瑠美子さん、